アイガー裏側で見たスイス伝統の真髄と現実~氷河の足元で牧羊するリアルペーターに出会った~

本日もまだグリンデルワルドにおりますヒロコです。
 
今日は下見として アイガー北壁を横から見える山小屋、Baregg Hutte(a,uはウムラウト付き)まで行って来ました。今滞在している部屋から夜 その山小屋の灯りが見えるのもあってなんとなく惹かれており。天気は今ひとつでしたが今日しかない、為せばなる…と途中雨ガッパ着ながらも登って行ったら… 山小屋の裏にとんでもない光景を発見してしまいました。。。
 
 
ただでさえ絶壁に建っている山小屋。その裏手のさらに斜度がきつくなっている いやもうここ崖じゃん?という斜面に なんとたくさんの羊が🐏
そうです こんなところで夏の放牧をしているのでした。
↑絶壁に佇む羊。崖の下の方に小さく見える白い点々も全部羊。さらにその下、谷底の川がどれだけ遠いかおわかりだろうか…
 
↑谷全景。左手前の緑の斜面にぽつぽつと羊。奥には冠雪した山と氷河が見える。広角でもなんでもなく普通に撮った画像。この山小屋の標高は1775m。奥に見える山、一番高いものは4000m超。。。
 
写真でご覧になってもお分かりの通り、羊ってかヤギくらいの身体能力ないと無理じゃない⁉︎という勾配なんですけど 当の羊たちは我関せずと言った感じでのんびり草をもぉぐもぐ…
岩の上から、お口モグモグさせながら私をじっと見つめる羊さん…
 
↑近くの羊さんを下から見上げたところ。その奥にもたくさん白や黒の羊がいるのがわかる。
↑岩の上から私を見つめる羊さん。可愛い…
 
癒される~、、、けど怖いよ!?
私的には立ってるだけで精一杯な急斜面で、羊を見ようと思って上を向くとすぐさまバランス失って滑落してしまいそうな…
 
そして一度足を滑らせたら止まらそうな草原。何百メートル谷底には石ゴロゴロの氷河の雪解け水流るる川。
 
モフモフ丸い羊散らばる崖の向こうには氷河が広がり、左手には雄々しいアイガーの岸壁… う〜む 脳がバグる光景でございました。
↑寄り集まって休む黒羊さんたちと谷奥の氷河。
 
 
それもそのはず、山小屋より向こうは「アルプス・トレイル」。つまり、ハイキングやトレッキングなど一般の人が楽しめるコースではなく、ガチの経験豊かなアルピニストじゃないと危ないですよ…と、スイスアルプスで定義されている山道なのです。
↑山小屋裏手。ここからアルプス・トレイル始まる。この斜面沿いに、獣道みたいなほっそい道がかろうじて整備されている…という状況。わかりますこの斜面!?カメラ傾けてないですからね。
↑山小屋に向かうコース入口。黄色の看板+白に赤のラインは一般人でも歩ける「ハイキング・トレッキングコース」。下の青看板+白に青のラインが「アルピニスト・コース(アルプス・トレイル)」。このようにスイスではきっちりと分けられている。分けられてはいるが、アルピニスト・コースに入るのに関所があるとか資格が必要、という事はなく誰でも入るのは可能。しかし完全に自己責任。万が一事故が起きてヘリ救助からの入院…なんて事になると、保険に入っていなければ何百万レベルの請求が来るので覚悟しましょう。スイスアルプスでは、コースがオープンな代わりに、各々がしっかり自分の実力を把握して動く事が求められるのだ。
 
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アルプスの牧畜風景は何度も見てきて見慣れているけれど、まさかこんな奥地、しかもアルプス・トレイルの急斜面で牧羊しているなんて思いもよらず、自分の足元の安全を確認しつつコーフン気味で写真を撮り山小屋に戻ると、また嬉しい出会いが。
 
山小屋でスモークソーセージをつまみにビールを飲んでいると、なんとこの羊たちの主、21世紀ペーターが相棒のボーダーコリー二匹と休憩しに帰ってきておりました!
↑アイガーの横顔を眺めながらのビール。最高!
↑スモークソーセージ二本とパン二切れ、11.60スイスフラン。ビールと合わせて17.6スイスフランでございました。スイスの山小屋としてはリーズナブルな方と感じた。…それとも普段はサンモリッツだからか?やっぱしあっちはセレブ用にお値段さらに高め設定かも知れない。。。
↑雨の後もあり外のテラス席は寒いので中でのんびり。室内でもカーディガンとユニクロ袖なしダウン着てました。熱波で話題の下界とは別世界…
↑21世紀型ペーターと相棒二匹。めっちゃなついてる♡
↑アイガーを背景にお休みするボーダーコリーちゃんが可愛い…
 
そして、ビールの勢いも手伝ってか?ご本人に話しかけた所快くお相手下さり、少し話を伺う事ができました。
↑アイガー横顔と牧人そしてボーダーコリー。絵になりすぎんねん。
 
 
牧人のこと…
・写真でもお分かりの通り、遠目で見たよりずっと若くびっくり。今まで出会った牧人は若くても30代中~後半な感じだったのですが、彼はどう見ても20代。で実際そうだった。
リアルペーターとしての生業は、まだ二年目。
 
・夏の間、約四か月間はこの谷で彼もいっしょに生活。てっきりこの山小屋に住んでいるのかと思いきやそうではなく、写真にも写っている絶壁の石陰にこしらえられた小屋で暮らしているだそうな!
 
…えぇ、羨ましい。もちろん簡単ではないだろうが、毎日氷河ビューですよ。
↑写真上方やや左寄りに、岩場のくぼみを上手に利用した牧人の小屋が張り付いているのが確認できる。
 
・冬はベルン近くの平野で冬ごもり。
 
羊たちのこと…
・ここで放牧されてる羊はなんと550頭!
・夏の終わりの牧下り(デザルブなどと呼ばれる)時は、やっぱり羊たちもこの崖っぷちハイキングコースを歩いて下って行くんだそうな…想像するだけで圧巻です。
・羊チーズや乳をここで作っているのか?聞いたところ、ここの羊さん達はお肉用。牧人さんいわく、乳用の羊は体が丸くなる(肥満気味)ので、こういった急こう配では放牧できないそう。なるほどね…
にしても、スイスのお肉がとても美味しく、特に羊肉は美味しくて大好きなのですが、こんな素晴らしい環境でストレスフリーで生きてたらそりゃ美味しいお肉にもなります。ありがとう。
↑羊さんと牧人の小屋。
 
ガチもん牧羊犬、ボーダーコリーのこと…
・一匹はまだ10ヶ月。もう一匹は4歳。
…どうりで休憩中、片方がちょっかい出してもう片方に怒られてました。師に学びながらここで成長しているのね~。
とっても大人しくいかにも賢そうで、控えめになでなでを喜んでおりました。
そしてこれもプチ感動したのは… ボーダーコリーの身体が羊の香りでいっぱいな事!
本当に、ここで共に生きている…という感じがひしひしと伝わってまいりました。
 
↑ハイキングコースから山小屋を見たところ。アイガーと氷河がどーん!な環境です。
 
 
スイスは特に牧畜業を大切にしていて、今でもいたる所で目にするし行政から補助も出るようだし、屋外の自然の中で放牧、化学飼料は使わない、など飼育環境に気を使っている牧畜業者が大部分。
国の伝統をしっかり守る体制ができているなぁ、と改めて思いました。
しかし一方で、この牧人さんはスイス人ではなく東欧出身という事を伺って、やはりスイスでも人手不足やいわゆる3Kの仕事にはネイティブはつきたがらないので外国人労働力に頼らざるを得ない…という、日本と同じ現実なのかな、という事も感じました。
経済的に豊かではない東欧では牧畜始め一次産業が主な産業なところも多いから若者への馴染みもあるだろうし、この牧人さんもその前は馬の世話をしていた…と言っていたので、心理的ハードルが低かったり仕事としても向いているのかも知れませんね。そう考えると、スイス人も都会化したって事なのかな…
 
というわけで、スイス伝統の真髄と現実に触れた、という感じがしてとても充実感のある一日でございました。
個人的にはやっぱり、ただ歩いて綺麗~、より、こうして現地の文化に触れられる体験ができると深みが増して面白い。
 
前からなんとなくこの谷に惹かれていたのは、第六感でわかっていたからなのかな~、なんて思いました。
↑山小屋付近からグリンデルワルド方面を見る。遠い谷底にグリンデルワルドの街が見える。山稜線左の平たいのはシーニゲプラッテ。プラッテというだけあって本当に平原なのが遠くから見ると特にわかる。
 
 
もう少し若かったら、私も牧羊をやってみたかった。
しかもどうせならこのくらい文明から隔離された環境で。
清涼な空気の中、車の音もヒトの声も聴こえず、聞こえるのは絶え間なく流れる水の音と風の音。ときおり響く羊の鳴き声…
犬とは、主人とペットではなく同僚として。雨の日も風の日も共に濡れ、眠る。
最高だ。
 ホームステイしたい。
 
※21世紀ペーターの写真はもちろん許可済みです。次回行ける時はプリントして持ってってプレゼントしよぅ~、と思いました。
↑アイガーの裏っかわ。えぐったように岩盤がスパッと切れていてそこから長く細く滝が流れていた。
 
↑山小屋と羊さんたち。今夜も山に抱かれて眠るのね…

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