ベルニナ線を車で峠越え&スイスのヴィンテージ家具引き取って来ました

ベルニナ線の谷を初めて自分の運転で車で峠越えし、予約していたスイスのヴィンテージ家具引き取ってきました。同時に、スイスにも忍び寄るグローバル化の波を感じたので、その件をシェアしたいと思います。

…去年秋 前々からちょっと気になっていたサンモリッツエリアの小さなホテルにようやく泊まる機会がありました。
外からの印象通り いやそれ以上にとても素敵で、小さいホテルながら一階にはレストランも併設されており、昔ながらの由緒正しいザ・スイスのおもてなしホテル という感じ。仕事でお世話になっている日本の旅行会社スタッフさんとも”これは今後いいコラボができそう”なんて盛り上がった矢先… 2024年3月いっぱいで廃業、という旨を滞在中に経営者さんから聞きとてもショックでした。

運営母体が変わるわけではなく本当に廃業で所有者も変わるから ホテル備品は全て空にして明け渡さないといけない…という事で、私が泊まった部屋にあった素敵な備品をその場で即、これもらいますから!と予約してから半年。
先日 車で引き取りに行って来ました。

写真で見ての通り 全面手彫りが見事なデザインテーブル。この、ちょっと和柄にも通じそうなデザインは、当エリア…スイス・エンガディン地方の伝統的な柄。
美しく珍しいだけではなく ホテル経営者のお友達のお父さんだかが作ったものだそうで 裏側には作成年と思しき1935の文字が。もうじき百年ですよ。
こんな歴史と温かみのあるテーブルが廃棄物になっては絶対いか〜ん!と ぶっちゃけ結構なお値段でしたが迷いなく伝統保存する事にしたのでございます。

これを引き取りに行くにあたり 今回初めて いつもは電車で峠越えするアルプスの山道を自分で車を運転して行ってみました。
4月末のアルプス峠はまだまだ冬。雪の壁に囲まれながらUピンカーブを駆使し、運転に慣れた地元民にやや煽られヒーヒー言いながらもやり遂げましたよ。その様子は動画にまとめましたので 良かったらこちらよりご覧ください。テーブルの詳細もご覧いただけます。

素敵なテーブルが手に入ったのはいいのだけど… 今回 スイスのホテル経営の裏側も少し知ってしまってショックもあった。

もちろん全部が全部ではないけれど 今回のケースのように ホテル経営者と建物・土地の所有者=オーナーは別な場合
いくらホテルとして評判が良くても現オーナーが箱を売ってしまい、新しいオーナーがホテルやる気なければ 有無を言わさず終わりなのだ。
経営者と言っても雇われ。地元密着だったレストランのシェフやウェイターや諸々スタッフもあっさり全員クビ。経営者の方なんて当ホテルで40年も働いてらっしゃったとの事で もう何もなくガラーンとしたホテルのエントランスで立ち話をした時なんて涙ぐんでましたよ。
辛すぎてもう入りたくないの…
お茶くらいご馳走したいんだけどもう水電気も止めちゃったから出来ないのよごめんね…

なんて仰って😭

こんないい立地と素敵な建物でホテルやらなきゃ一体何やんのかと言うと、富裕層向けのアパート(まぁ別荘だわな)になるのだそう。

…つまらん!そんな金持ちの投資・税金対策のツールとして使うなや〜。長年ホテルとして多くの人を迎え入れてきたこの建物も悲しいだろうに… と憤りを覚えたが 現実として私のようなド庶民になす術はなく。テーブルひとつでこのホテルの痕跡を残すのが精一杯。

サンモリッツエリアのホテルで働いている友人ともその話をした際には彼女も呆れてた。

そうやって金持ち向けのラグジュアリー住居ばっかり増えていってさぁ。おかげで私達みたいな労働者が借りられる部屋の不足が全然解消しないのよッ と。

確かにですね、当地に来た際に注意して見てもらえるとわかるのですが アパート的建物が多くある割に シャッター閉めたままの生活感のない部屋がたくさんあるのです。
それは お金持ってる人が所有していて一年のうち数日しか利用しなかったり、観光客にホリデーアパートとして貸し出す用だからなのです。
なので 外国からの労働力に頼っているスイス観光地だけれど、住居用の部屋が少なく 結果賃貸料金も高くなりがち、という事態になっているのがサンモリッツの現状だそうです。

スイスはとっても綺麗だし素敵な国ですけれど お金にはかなりシビアだし 特に富裕層のリゾート地サンモリッツでは こういった金持ち目線のマネーゲームに優先度が置かれているわけです。
国境の仕切りが低くなり 世界中からのお金持ちやビジネスが入り乱れる中で これまでスイス伝統だった小規模ホスピタリティでは立ち行かなくなって来ている表れでもあるのでしょう…

こうして スイス昔ながらのアットホームなホテルがどんどん少なくなり、どこにでもあるような大規模ホテルやレストランが増えて行くのは寂しい事ではあるが、近年この地でも カレーの国や赤い大陸国の富裕層が増えている事を鑑みると このままでは残念ながらこの傾向は進んでいくと思われる。
何かと規制の厳しいスイスでこれですからね 規制がないに等しいような日本ならどうなる事やら… うむ。

↑ まだまだ残雪残り冷たい風の吹くサンモリッツエリアでしたが、大地には春の気配も!ハルオキナグサとクロッカスがたくさん群生していました。動画中で風に揺れる花達をご確認ください。

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