アルプスの花13.なかなか出会えない神秘的な花クレマティス

学名:Clematis alpina ~クレマティス アルピナ~
英名:Alpine Clematis
 
出会える時期、場所:6-7月。私の花バイブル「スイスアルプス花図鑑」(内田一也氏著)によると、スイスではツェルマット、グリンデルワルドエリアにはなく、サンモリッツエリアにしかないそう。私は主に毎年サンモリッツエリアの山を歩きまわっているが当地方でも実はあまり見ない。今までで確認できたのは二か所だけである。
 
大ぶりなのであれば目につきやすい花。形も独特。
草木の生い茂る斜面にて、他の木につたうように咲いているツル性の植物。ツル性だからアケビかなんかの仲間かな…?と思いきや、キンポウゲ科 センニンソウ属のお花。
しかしよく見ると、アケビも植物分類学的にはキンポウゲ目 アケビ科であり、先祖は同じか近縁なようです。てか、キンポウゲ系の範囲広し…
 
センニンソウとは漢字で書くと「仙人草」。この花始めセンニンソウと名のつく花は、細く長い花びらが仙人の髭を連想させることからついたそう。確かにこの花も、淡い紫、中からのぞく白いポヤポヤそしてうつむき加減で咲く様が、どこかミステリアスな雰囲気です。
ちなみに、たった今私も「花びら」と書いてしまいましたが、実は淡い紫の部分は植物学的には花びら(花弁という)ではなく、ガク片だそうです。アジサイもあの花に見える4枚の部分が実はガク片でその中心に小さな小さな花があるのと同じですね。受粉に貢献する虫さんを呼び込むための工夫なのでしょう。我々ニンゲンも異性の目を惹きつける為にあれこれ頑張るようにね。。。生きものの根本は同じですね♪
 
さらに気になったので調べてみると、クレマティスとはギリシャ語で「つる」「巻き上げ」を意味する「klema」に由来するそうです。それがラテン語で「Clematis」となったわけなんですね~。
ちなみに(ちなみにばっかやな)多くの場合現代でも同じ意味が残っているのでよく比較しているイタリア語ですが、これに限っては関連性がない模様。
現代イタリア語で「蔓性植物」は「vite(ヴィーテ)」。。。はい、一般に「ブドウの木」の意味として使われている単語です。自家製ワインを造っている北イタリアうちの界隈でも畑仲間の間でしょっちゅうvite,vite言ってます。そして「ブドウ畑」の事を「vigne,vigneti(ヴィーニェ、ヴィニェーティ)」。
ブドウが蔓性なのはお馴染みですが、特に古来からワイン生産が盛んだったイタリア。人々の生活に最もなじみ深い蔓性植物だったので”蔓性 = ブドウ”となったのでしょうかね。
もうひとつこれは私個人的な想像ですが、ぶどうを表すこのviteという単語は、同じくイタリア語で「命、人生」を表す「vita(ヴィータ)」とも似ている。似ているってか、vitaの複数形がviteなので同じになる。
ヨーロッパで古来からワイン製造が盛んでよく飲まれていたのには、何もみんな酒好きののんべぇだったからではなく(たぶんそれもあろうが)、昔は浄水技術、上水道設備が発達していなかったので誰でも手軽に安全な水を飲むことができなかったんですね。飲料水作るよりぶどうからワイン、穀物からビール作った方が簡単、コスト安だったのです。だからかつてはワインとは「命の水」であったわけ。そんな理由からもイタリア語において「vita~命~」と「vite~ブドウ~」が似ているのかなぁ、などと妄想するのでした。
 
…て事でかなり話がそれましたが、本日もおつきあいありがとうございました。
 

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アルプスの花13.なかなか出会えない神秘的な花クレマティス” に対して 2 件のコメントがあります

  1. 吉田篤司 より:

    貴ブログのご教示により、過日、テイラーノ訪問が実に充実しました者です。
    このたびこのたび、クレマティスについてアップされているので、老婆心ながら、連絡を差し上げるものです。
    当職は、植物学者ではありませんが、ブログにあるクレマティスとは、日本愛好家、特に、イングリッシュガーデンを好む人には垂涎の、クレマティス(キンポウゲ目/キンポウゲ科/センニンソウ属)と近縁のものと思われます。もしそうであれば、日本では、江戸時代からテッセンという呼び名で愛好された植物と概ね同一なものと思われます。すなわち、誤解を恐れずに申し上げれば、ある種の日本人にとって貴ブログでいう”クレマティス”は「神秘的っていいすぎ?」となってしまう植物かと思料します。
    もちろん、園芸と天然の植物の価値には厳然たる格差がありますし、さらには、この植物は、高温多湿を嫌うので、日本では育てにくく、ホームセンターで鉢物を買ってきても、概ね枯らしてしまうのが現状なので、アルプスで、生き生きと生育している天然のクレマティスを、我が同胞が見れば感動することは間違いのないところと思われます。
    それはさておきさておき、https://sakata-tsushin.com/yomimono/rensai/standard/eastasiaplants/20230606_008563.htmlから推定するに、アルプスのクレマティスと、ヒマラヤ系のクレマチスは親戚関係にあるか、とロマンチックに想像しました。
    我が家がスイスを訪問したときに、スイスのクレマチス(我が家のクレマチスの遠い遠い親戚)に会えなかったのは、残念です。
    いつもながら、貴重な情報を、ありがとうございました。
    (実のところ、日本の我が家にも、奇跡的に、クレマティスが二株生存しています。春に花が咲くと、夏には見た目に枯れてしまいします。剪定の仕方も、素人には、よくわかりません。故あって、一度、掘りあげたのですが、根が実にたくましく、これが生命のありかたかと学んだ気がしたことがあります。)

    1. Hiroko-Valtellina528 より:

      ティラーノを楽しまれたようで何よりです。
      植物に関するお話もありがとうございます。はい、仰る通り園芸種と野生種は全くの別モノだと私は思っておりますし当記事でも書いております通りこのクレマティスはアルプスでもあまりお目にかかれませんので私の感覚では十分に神秘的です。
      国は違えど多くの似た花があり、自分では動けないのにそれぞれの地に適応している植物の生命力の強さを感じますね。

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