“ディズニーランド”なスイスの現実

“ディズニーランド”なスイスの現実
~ここにもあった、名ばかり管理職~
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昨日、悲しいニュースを聞きました。
この夏の スイスのお仕事で
大変お世話になったホテルが
なんと
来年春で一旦閉鎖する、
というのです。
理由は、ホテル建物と土地、
不動産の売却。
なんで!?と
私は何度も聞いてしまいました。
だって、立地良し、サービス良し、
併設レストランはいつも大賑わい…
かなり、いい仕事をしていたようだったのに。
こじんまりとした所と、
フレンドリーなオーナー始め
スタッフの皆さんがかもし出す
アットホームな雰囲気が
私に合う、とても居心地のいい場所だったのに…
残念でなりません。
…売却されて、また新しく営業するんでしょ?
かえって一新されていいんじゃない?
…と、簡単に行けばいいのですが。
現実は、そんなに甘いものではありませんでした。
昨日も、私がのん気にご飯を食べている所に
気さくなオーナー婦人が席にやってきて
雑談のついでに、その告白をしてくれたのでしたが…
実は、彼らは本当のオーナーではありませんでした。
いわゆる”雇われオーナー”であり、
ホテルの建物と敷地、
要するに不動産を所有する
本当のオーナーは、
別にいたのです。
雇われオーナー夫妻は、
今年小学校に入ったばかりの
双子を抱えつつ、
朝から晩まで
レセプションのみならず、
忙しい時間には給仕の仕事も
こなしながら、その地主に、
毎月家賃(と当然利益の一部)を
払って生活していたというわけです。
その“本当の”オーナーが無常にも今回、
この不動産を売る、という選択をしたのでした。
これに対して、“雇われ”の彼らができる事は
二つに一つ。
1.不動産ごと買取り、真のオーナーとしてやっていく
2.閉鎖に合わせ、失職→やむなく転職
一般家庭用の、アパートワンフロアーでも
“億”単位のスイス(本当なんですよ!)。
雇われオーナーに、ホテル丸ごと買い取る金なんて
あるわけありません。
“買うだけのお金がなかったからね…”
私のために、多少つたないイタリア語を
駆使して語ってくれるご婦人の言葉が
ストレートに、痛く響きました。
このホテルでは10年間、
こうしてやってきたそうです。
故郷である、別な町に戻り
やり直すことになるが、
まだ、次の職は決まっていないとのこと。
でもそんな事、
地主には関係ないのですね。
オーナーだけではありません。
レストラン部門のコック達、ウェイトレス3人。
掃除のおばちゃん2人。
全員、この不況のさなか
新しい職を探さねばなりません。
一人のトップの決断で
何名が、何家族が
路頭に迷いかねない状況に
陥るのでしょうか。
悲しい事です。
でも、これが現実。
実はこのホテルだけではなく、
付近でも、大きな4ツ星ホテルが
少なくとも2軒、売却のために
閉鎖中です。
世界的に見ても、
常に経済的安定の地位を
保ってきたスイス。
セレブの避暑地として、
世界中の金持ちを集めている
サンモリッツ・エリアですが
ここにも、世界的な経済危機の波は
確実に 押し寄せています。
それに比べると、日本は
まだまだ、“情”に守られてつつ
何とか保っている感がありますね。
しかしおそらく、
グローバルな波には逆らえず
日本にももっとシビアな
労働環境が訪れるでしょう。
頑張り、などという
体育会系、抽象的尺度は評価されず
成果 という結果、
客観的尺度のみ。
成果を挙げていても
トップの一存で
テーブルの上の埃のように
ほんの一吹きで
全てなかった事になってしまう…
そんな状況に対処できるように
なるためにも、
井の中の蛙に甘んじることなく
広い視野で世界の動きを見定め、
あらかじめ準備しておく事が
“テーブルの埃”で終わらない為に
今後必須な事だなぁ、と
改めて感じた出来事でした。
※写真は、
世界遺産・ベルニナ鉄道で
”通勤”中。
Poschiavo~ポスキアーヴォ~
付近より

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