2022年ワイン用ぶどう収穫Vendemmia報告〜熱波の影響は?ネッビオーロワイン出来予想〜

今年も無事に、ブドウの収穫が終わりました。

今年の収穫報告の様子は私のチャンネルにて動画でもあげております。

こちらの記事は 動画で話している内容を文字に起こしたもの。動画か文字かどちらかお好きな方をお選びいただいてもいいし この記事を字幕代わりに動画を楽しんでいただく事も可能です。

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今年の結果を一言で言うと… 史上最高の出来でびっくり!

気づけば、我々のブドウ栽培・ワイン造りはもうかれこれ10周年になるのですが、この10年の中で一番の出来だった。

この夏は、日本でも各種ニュースや私の動画でも度々お伝えしていた通り、欧州は熱波により大変なことになっておりました。40℃近い異常な暑さと水不足で、トマトが赤くならないとか雑草が焼けて茶色くなっちゃったとか、とにかく自然にとって過酷な状況だったため、正直誰もが心配しかしていませんでした。

ところがどっこい、ふたを開けてみたら

・豊作、

・房のひとつひとつがデカい、

・粒のひとつひとつもはちきれんばかりのぷりっぷり・艶々。そして食べてみるととても味が濃くて甘くて美味。

・そして何より一番重要なのが、どの房もほとんど病気にならずとっても健康な粒ぞろい

という結果で、期待値が低かったことも手伝ってこの上ないサプライズ、嬉しい悲鳴、といったところで、ブドウ収穫中、畑のあちこちでいろんな畑仲間…個人の趣味レベルから大規模なカンティーナまで…とすれ違うんですが、もうみんなニッコニコでした。

この夏を通して、改めてブドウってものすごい強い果樹だなぁ、と実感しました。

前の動画でもお伝えしたけれど、水不足はこの夏からではなく、もう冬から始まっていたのです。冬も雨・雪がほとんど降らずだったのでほぼ一年、今年度のシーズンは全くブドウに水やりできなかった。

山からの湧水もだいぶ減っていたのが目に見えていたし、例年だと畑に公共の水が出る水道があるのだけど、あまりの水不足にそれも元から止められてしまい。

結果、畑にある他の果樹…梨・リンゴ・プルーンなんかはどれも実がならないか、または鳴っても小さな実のまま終わってしまったのだけど、ブドウはこんなに豊作のプリプリで。一体どうやってどこから水を取り込んだのかと。それだけ地中深くまで根を張ってる、という事なんでしょうね。

そしてもうひとつ驚きだったのは、ほとんど病気にならずむしろ例年より健康な粒ぞろいな出来になったという点。

例年だとシーズン中、10回前後、薬の散布作業があります。しかしこの夏はあまりに日差しが強かったため、薬剤を含んだ水なんかかけたらむしろ葉や実が焼けちゃってダメになるリスクあり…という事で、2~3回散布をスキップした生産者がほとんどだったんですよね。

(ちなみにうちはオーガニック認証の天然由来のものを使って回数もなるべく少なく9回にしてるんだけど、オーガニックとか興味なく生産量・効率重視の大手だったら普通13回ほど、その中にはもちろん防腐剤・殺虫剤も含まれている。)

薬剤散布回数が例年より少なかったにもかかわらず、むしろ例年より健康なブドウだったということは、それだけカビや害虫・ウィルスも繁殖できないほどの厳しい暑さと乾燥だった、という事。

そんな過酷な環境の中にあってこれだけ質・量ともに申し分ない実をつけてくれたブドウってすげぇ!と感じると共に、薬剤散布回数が少なく済んだことで

・いつもより環境に優しい栽培ができた

・生産者のお財布にも優しい一年になった…薬剤もタダじゃないしそれを散布するのに機械も必要。特にあらゆるものの値段が上がっている今年はかなりのコスト削減につながった。

という嬉しい効果がありました。

というわけで、結果的に今年は少なくともブドウに関しては「熱波様様」な一年となりました。

そして個人的には、このようなブドウの強靭な生命力を目の当たりにして、ふたつの根本的な事を学べたように思います。

ひとつは、ヨーロッパで何千年も前からブドウそしてワインが造られてきた理由がよく実感できた。今年はたまたま、というか初めて人工的に水やりできない状況だったわけだけど、その昔なんて灌漑設備もろくになかったわけだから毎年が自然任せだったわけですよね。そんな中でもしっかりと結果を出してくれる果樹の存在は、夏秋の収穫が冬の生存に直結する時代において、どれだけ心強くまた救いであったか。

ふたつめは、古の人の収穫の喜びの大きさ、というものが少しわかったかなと。これだけの水不足、人の手をかけたくてもかけられない、祈りながら毎日天を仰ぐしかないひと夏。他の作物がさんざんでがっかりな気持ちが蓄積し、ほぼ諦めの境地に至る頃、この秋になってほぼ最後の収穫物がこんなに豊作で終われるという。自然と向き合いながら一年やってきた正に「結果」がずっしりと自分の手に感じられる。それほど嬉しい事はございません。

深く輝くブドウをこの手に見ていると、本当に自ずと出てくるのです、感謝の気持ちが。自然への畏敬の念と申しますか。時に容赦なく厳しく人の努力や祈りを無下にし、同時にこんなに寛容に恵みをくれる自然という存在が、やはり人間の力だけでは及ばないダイナミズム。そういった気持ちから自然に、収穫祭や自然信仰、そこから宗教なんかが生まれるのが容易に想像できる。

我々の原点はやはり「土」「地面」なんだなぁ、と改めて感じた熱波の夏でした。

今年のワインの出来が楽しみです♪

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